「卒業、か」

手にした卒業証書にようやく卒業を実感した

長いようで短かった学生生活・・・・それはかけがえのない宝物

その時は毎日が輝いていたとは言えなかったけれど

だけど”今”なら辛かった事も悲しかった事も・・・・すべて一纏めに輝いていたと言えるのかもしれない



悔いを残さない学生生活を送ったと言えると思う・・・・たぶん

遠くで肩を叩きあって別れを惜しむ男子達

その中の一人が胴上げされているのを見て、少し胸が痛かった



(結局、何も言えなかったな)



淡い恋心、気がついたらいつも目で追っていた

彼の声が耳に入るたび、彼とすれ違う度・・・・私はドキドキして



だけどそんな日々ももう終わったのだ

それぞれが進む道がある・・・・交わる事はない道


(それじゃあ、ね)




心の中で呟いては踵を返した






+    +    +






「あ、おいっ・・・!!」


、と内心で呼ぶ

だが音にならず胸中で呼ばれた名は彼女には届かない

同級生や後輩に揉みくちゃにされて、行きたい場所に行けない

人並みの隙間から見えた彼女はこちらを見ていて・・・だが踵を返して歩き始めた



次に会えるのはいつだろう?



今までだって接点はなかった

そんな俺達だから進む道が別々になるこれからに

友人という関係が薄れるのは見えていて






咄嗟に人波を押しのける、そして叫ぶように名前を呼んだ




「おい、!!」






立ち止まり、彼女は振り返った






+    +     +










本当にいいの?

これで後悔しない?


二度と会う事だってないのかもしれないのに

彼の事が好きでしょうがないのに






何も言わないまま立ち去るなんて




(そんなの、嫌)





そして、立ち止まる

!」


同時に名前を呼ばれては振り向く

人並みを押しのけてくる彼


私達の接点と言えばほとんどなくて

貴方としゃべったのは委員長として生徒会長である貴方に予算の報告をした時とか

文化祭の前に残って予算調整をしたりとか・・・本当に数えるほどしかなかったけれど



それでも私は―・・・・








「待てよ、俺は―」



「アーサー!私、私貴方の事が―」








好き、という言葉が重なった









るの


『その時僕らは青春の中にいた!』様に提出させていただきました。