ここはアメリカ某所の国際学校である。 選ばれし者だけが入学でき、世界各国から留学してくる者も多い。 そんな中、校舎内でイタリアからの留学生、フェリシアーノと日本からの留学生、が廊下に居た。 改めて見る廊下。学校そのものが広いのだが、その分廊下も随分と長い。走ったら疲れるんだろうな、とは思った。 フェリシアーノも同じことを考えたらしく、こんなことを口走った。 「この廊下、端から端まで走ったら疲れるんだろうね。 あ、そうだ、勝負しない?どちらか早くあっちの壁までたどり着くか。」 向こう側の壁に指を指す。向こうの壁は小さくぽつんとしか見えない。いくら休み時間とはいえ、こんなことで時間つぶすのは嫌だった。 「じゃあこうしようよ、買ったほうが負けたほうに1つだけ言うことを聞かせる!勿論絶対断れないんだよ。」 フェリシアーノがこんなことを言うのは珍しかった。自分から率先して勝負事を持ち出すのは。かといっては驚かなかった。どうせ競走に勝って「日本の可愛い女の子紹介して!」なんていうに違いないからだ。 「じゃあいいわよ。でもいやらしいことはだめよ?」 「分かってるって、俺はそんな事頼まないよ。」 2人は壁際に立ち、構えた。だがはあることに気がついた。 「誰が号令かけるの?どちらか、といっても不利じゃない?」 「あっ、そうだね。」 「んで、こんなくだらないことでお兄さんを呼んだの〜?」 気だるそうに言うのは、フランスからの留学生、フランシスだった。 「んまぁ可愛い弟分と妹分だ。ちょっとくらいいいか。」 「流石フランシスね、頼れるわ。じゃあよろしくね。」 2人は再び構えた。フランシスの号令とともに2人は走り出した。先頭にはが居た。 (フェリシアーノは学ランだから私より不利なのさ。) イタリアンを振舞ってもらうんだぁ〜!と心の中で嘲笑しながら、余裕の表情で走る。は女なので、スカートだ。しかもミニであるため、走りやすい。下着が見えるのもお構いなしに全力で走る。これもパスタやピザのため! 「顔がにやけてるよ。」 「え、うそっ!」 長い廊下の半分くらいまで来たところで、の前に黒い影が現れた。フェリシアーノだ。彼もまた余裕の表情で、を抜かした。余裕と言うか、なんというか、さわやかな表情をしていたため腹が立った。ムキになっても彼を抜かせず、彼女より先に壁にタッチした。は悔しいことに負けた。 「じゃあいうこと聞いてもらうよ!」 「もーいいわよ、で、何?」 「んーとねぇ」 フェリシアーノが急に真剣な顔をしたので、は一瞬胸がときめいたのが分かった。一体何を言うのだろうか。 「俺と結婚しようか。」 「えっ」 「あ、いや、俺と結婚を前提にお付き合いしようかって。」 顔がみるみる赤くなるのが分かった。顔が熱い。なんで、こんな唐突にこんなことを!?は混乱した。恥ずかしくて涙が出そうになった。 「知ってるよ、が俺のこと好きだってこと。」 「・・・」 「だって俺が女の子をナンパしてる時、いつも嫉妬してたでしょ?」 「・・・」 「俺も前から君が好きだったんだよ?」 嬉しさと恥ずかしさが一気にあふれ出た。フェリシアーノは困った。「ええ、何で泣くの?」不安げに言った。「もしかして俺の勘違い?」 「ううん、勘違いじゃないよ。私、フェリのこと好きよ。」 「えっ、あっ・・・良かった。」 「それじゃあ、よろしくお願いします。」 「えっ、や、やったぁ!大好きだよ、!」 に抱きついた。恥ずかしいが、周りには誰も居なかったので手を回した。は安堵しきっていた。 「あれぇ、お兄さんをほったらかしぃ?」 2人の姿をしっかり見ていたフランシスであった。 |