「あ、そこの君!ちょっとこっちおいでよ!怪しくないから!ハァハァ」「え、あ、はあ…(怪しすぎる)」「どっからどーみても怪しいっちゅーねん!それよりお嬢さん、俺特製のトマト食わへん?」「え、あ、その…(なんでトマト!?)」「お前らなあ、それじゃあ意味ねえだろ!おい、お前。つまんねえ日常、ぶっ壊してみたくねえ?」目の前にる三人の先輩が、それぞれ私に手を差し出す。ドクリ。私はなんだか胸が熱くなって、思わず「…は、い」うなずいてしまったのだ。それが怪しい部活――青春部(なんてださいネーミング!と初めて聞いたときに思った)に入部することになるとは全くしらずに。



「俺ら、もうすぐ卒業やなあ」「…卒業、しちゃうんですか」私は一年の時ばりばりの帰宅部だったのに、二年になって三人に勧誘されて晴れて青春部の部員となった。でも部員は私含め四人。先輩方が卒業してしまえば、私は一人だ。それがとてつもなく寂しくて、ぽつりと言葉をこぼしてしまった。「なに?ちゃんは俺らがいなくなって寂しい?」によによ笑いながら質問してくるフランシス先輩はものすごく癪だが意地をはるのもどうかと思ったので素直に答えておいた。「寂しいですよ。あたりまえです」言い終えてから恥ずかしくなった。顔が赤くなってるのがわかる。先輩たちは、目をぱちくりと開いていた。そんなに驚くほどのこと?「んだよ…。素直で可愛いじゃねーか、ギルベルト先輩にわしゃわしゃ頭を撫でられて、目をつむる。乱暴なんだけど、どこか優しくて暖かいこの撫で方が私は嫌いじゃなかった。「あーずるいぞ!俺もちゃんとイチャつきたい!!」「ギルベルト!抜け駆けは禁止やぞ!!」「うるせー!早いもん勝ちだ!!」後ろからアントーニョ先輩、横からギルベルト先輩、前からフランシス先輩に抱きつかれてなんだか変な感じ。でも心地よくて、私の顔は自然に緩む。「ホント、卒業式とかこなきゃいいのに…」そうすれば、ずっと先輩たちと一緒にいられるのにな。ふいに涙がこみあげてきたから、とりあえず先輩たちに抱きついておいた。



「終わっちゃった」卒業式、終わっちゃった。ああこれで、先輩たちともお別れなんだって思うと、私の涙は止まってくれなかった。止めようとすると楽しい思い出がどんどん溢れてきて、余計に涙は零れるばかりだった。「おい、。…って、何泣いてるんだよ」「ちゃん、泣いとるん?」「ちゃんに泣き顔は似合わないよ」前から先輩たちがやってきて、私は顔をあげる。今の私の顔は、きっと赤くて腫れてて、最悪なんだろうな。フランシス先輩は優しく、まるで宝物に触れるみたいに私の涙をぬぐってくれた。アントーニョ先輩は、「泣かんで、泣かんでや、ちゃん」って言いながら、私の背中をさすってくれた。ギルベルト先輩は、いつもみたいに乱暴にわしゃわしゃと頭を撫でてくれた。ああ私、先輩たちのことがホントにホントに大好きなんだ。いかないで、先輩。卒業してからも、私とあってくれますか。私のこと忘れないでいてくれますか。言いたい事は山ほどあるのに、ぜんぶ喉でつっかかって言葉にならない。「せん、ぱ」ぽろぽろぽろぽろ。フランシス先輩がぬぐってくれても、私の涙は止まらない。「せんぱ、せん、ぱい。せんぱい。せんぱい、好きです、好き、大好きです」「!!、おま(っ…可愛い!)」「ちゃん…(悶え…!!)」「ちゃん!(なんやこの胸キュン!!)」ぎゅっ、と先輩たちに(しがみつくように)抱きついた。「…、これやるよ」ギルベルト先輩から渡されたのは、ボタンだった。「…これ?」「俺のもやるよ」「俺のもや」フランシス先輩とアントーニョ先輩にもボタンを渡されて、そっと顔をあげる。先輩たちの制服の、第二ボタンがないのが分かった。「これっ…!」「卒業しても、俺ら青春部は不滅だ」「卒業しても遊ぼうね、ちゃん」「また一緒にトマト料理作ろうや!」ああ、青春部とかあいかわらずダサいなあなんて思いながらも、目の前の先輩たちの笑顔に答えるように、もう一度先輩たちの胸に飛び込んだ。まあ、つまりね。



私たちは青春を謳歌しているのである
(青春とか、ださいけどさ)(でも私たち、青春してるんだ!!)



(090323//相変わらずの不完全燃焼orz。自分主催の企画『その時僕らは青春の中にいた!』提出)